十色

石川県加賀市の美容院と住宅です。

独立・開業にあたって
ご実家から(本当に)スープの冷めない距離にある
コンパクトな敷地を手に入れられたところから
お店+家づくりが始まりました。

プライベートでも、独立のタイミングだった
女性オーナー。

最初は自分たちが住んで
家族が増えたら、次は実家にお住まいのお母さんが、という長期計画から
最初にでてきたキーワードが「別荘のようなくらし」。

「暮らしの家族構成を変化させることで
つねに視点を更新しながら、心地よくくらす」意味だと解釈し
お店と住宅を切り離さず
個性の違う2つの場所が接するからこそ生まれる、快適さを探究しました。

(*)

店舗付き住宅は、一般的に
プライベートを見せないよう、切り離してつくります。

ですが、将来あるだろう子育てをイメージすると
公私が重なる部分を手放すことは
プラスには働かないように感じられました。

小商い継続の大前提は
前向きな公私混同。

敷地は、道路の向こうに柿の木のある
大きな切り欠きの変形角地。

車の高さをかわせば
東からの朝日がふりそそぎ
牧歌的な風景が広がります。

でも、住宅とお店のどちらにも
めいめい開口をつくるのは、不経済。

だったら開口を共有して
その風景を接点にするというのは?

はさみのカッティングシートは道路側のサインに

お店と住宅のどちらにも近すぎない
適切な距離を保つ工夫さえあれば。

そこで出てきたのが、
室内テラスのアイディアです。

黄色い壁は風水的によいとのリクエストから(*)
天井高が低い方が落ち着くシャンプースペースは室内テラス下に

冬に低い空の時期が長い北陸では、サンルーム的な場所が重宝します。

そこで、大きな切り欠きのある変形敷地を活かすため
道路の切り欠きのある敷地におさまりの良い、五角形のサロンをつくり
威圧的にならないボリュームで吹き抜けとしました。

そこに、お店から直接住宅が見えることがないよう
庇のような室内テラスをつくったというわけです。

住宅側からみた室内テラス 五月人形を飾ったりもされるとのこと

「美容室というより
近所の方がふらっと入って話ができる場所にしたい」というご要望から
着付け用の和室を、天井の低い、サロンの浮島のようなしつらいにして
住宅とのもうひとつの接点をつくっています。

実際、お子さん出産後、退院されたばかりの頃には
この畳の部屋で過ごされたとのこと。

水面に漂う小舟のイメージでつくった和室

この住宅を気に入ってくださったことから
後にご実家も設計することになり
室内テラス、背の高いサンルームのような空間、
土間+腰をかけられる和室といったアイディアが
引きつがれていきます。

生活も仕事もすべて「くらし」。

さまざまな世代のさまざまな視点が日々交換されるからこそ
日々の暮らしが更新され、心地よさに成長するという
私達の軸を見つけた仕事です。

十色

所在地:石川県加賀市
用途:住宅・店舗/新築
規模:木造二階建
延床面積:138.7㎡(42.0坪)
設計:吉田裕枝・小谷友樹/ミラボ
構造:S3 Associates
施工:道場建設(株)
植栽:田中美穂植物店
竣工:2012.3.
写真:池田ひらく(*はミラボ)