西陣の干菓子店

旧店舗のお隣を、新たに工房にすることになり
店舗と工房の隣二軒をつなげた
町家の「ニコイチ」改修・改装です。

Before (左)・After(右)



最低限の改装が求められたので
改修の必要性が高い、お庭の整備に注力したのですが
そのことが、お店らしさを引き出すことにつながるよう
条件を整理していきました。

結果、「クラシックな町家」と「ポップなお庭」という内外空間の対比が
主題になりました。

私たちが目指す「大掃除」「模様替え」のような設計プロセスの
ひとつの形です。

設計開始時にクライアントから投げかけられた課題は
「(お店のレベルを下げて)路地とフラットにしたい」ということ。

以前のお店は、路地に面した「店の間」だけを店舗にされていたので
町家と路地の間の、椅子の高さほどのレベル差も気にならなかったのですが
奥の座敷まで引き込むとなると、確かにハードル高いもの。

それでも、建物の床レベルを下げることは難しいので
代わりに、細長い台所の土間に新たにスロープをつくりました。

ゆるいスロープを歩み進めながら、目が庭を追うことで
レベル差が感じにくくなるという
「フラットさ」の意訳です。

漆黒の店内とは対照的に
庭の板塀には、側面に少しばかりの色をさし
背景に工事の仮囲いとして使われる鋼板を使いました。

木々の緑をぼんやり映しとる仮囲いの鋼板(*)

干菓子的にカッチリ形を整えられた植栽の見え方が
来店時間や天候によって、変化するしつらいとなっています。

午前中の東からの光は黄色い壁に反射して。

午後の西からの光は青い壁に反射して。


オンラインでも買い物が楽しめるこの時代
リアルなお店にわざわざお客さんが足を運ぶ価値について
よく考えます。

その価値が、お客さんだけでなく
日々、路地を通るご近所の方にも伝わるなら
クライアントののぞむ「フラットさ」とつながるのでは、という思いで
取り組んだ仕事でした。

西陣の干菓子店

所在地:京都府京都市
用途:店舗/改修・改装
規模:木造二階建
延床面積:65.49㎡x2棟(19.9坪x2棟)
設計:吉田裕枝/ミラボ
施工:みずほ工務店

家具:坂田卓也製作所
植栽:田中美穂植物店
竣工:2012.8.
写真:fotochihiro(*はミラボ)

*現在は事務所として再改装されています。