価値を伝える – 書いてガイドする京都「文化的」景観-

2020 7/29
価値を伝える - 書いてガイドする京都「文化的」景観-

目次

京都の地形と文化との関係がそこはかとなく感じられる、
素敵な場所の素敵な部分を掘り下げて、英語での読み切りエッセイを
私的京都「文化的」景観として、インスタグラムでご紹介しています。

そこで、3–labに紐付けた「CULTURE loves LANDSCAPES」プロジェクトの紹介を兼ねて、
私のもう一つの仕事、英語ガイドを通した「価値のプレゼンテーション」のメイキングについて
書いてみます。

このインスタグラム、もともとは、‘CULTURE loves LANDSCAPES’ の一環の、
京都「文化的」景観ツアー用リサーチ備忘録として始めました。

そんなあるとき、インスタの特性である、画像が一覧できるポートフォリオな雰囲気が、
ガイドブック向き?と気付いたこともあって、リサーチのプロセス自身をみせる、
私的京都「文化的」景観ガイドブック
に方向転換し、今に至ります。

平たくいえば、スライドショーでみせる、ローテクの英語版ブラタモリ的バーチャルミニツアーです。

2020年7月現在はこんな感じでお届けしています。
①テキストの先頭にタイトルを入れる
②インスタで投稿可能なマックスの文字数(約2000文字)のテキスト
③インスタで投稿可能なマックスの画像数(10枚)の写真
これまで70記事投稿して、フォロワー数は25人、❤️は40〜50程度です。
(エンゲージメントは、約200%の計算?)

①下見する

京都限定の情報ですが、京都ナビを愛用しています。
オーバーツーリズムは、「時間」「場所」「季節」をずらすのが有効だとされています。
確かに季節限定公開の寺社は多く、本当に調べた人しか来ないので、わさわさ感が少ないです。

あたりがついたら、Google Mapで、地形と周辺施設を確認します。
気になる場所のレビューがすぐ見られるところが、便利です。実際行ってみたら、
お隣の方がずっと面白かったということは結構多いので。
調べすぎは現場での見方を偏らせるので、さらっと。

②写真を整理して、現場で感じたストーリーのあたりをつける

現場では、偶然の成り行きに任せ、ハプニングを楽しみながら、心が動いた瞬間にシャッターを押します。

帰ってきたら、目的地だけでなく、旅の全体像が分かるように、15枚程度まで、写真を整理します。
今回、最終的には、この10枚を選びました。

画像4

画像5

画像6

画像7

画像の整理をするのは、テーマのあたりをつけるためです。

そして、行った当日は写真を整理して、テキストは書かず、寝かせます。
勢いに任せて書かない方が、客観的に魅力が観察できて、
趣味じゃないけど、魅力の理由は理解できる」という状況に持ち込めると考えるからです。

-男山ケーブルは短時間だったけれど、眺めもよく楽しめた。(2)
-お宮詣りの家族が多く、目についた。(3)
-おみくじや、御朱印などが充実。デザインレベルが高い。(5・6)
-山頂に地元住民による里山を守るNPOがあり、そこが竹細工のおもちゃなどを販売していて、
子どもが大喜び。(8・9)
-お昼で食べたうどんセットの、焼き餅や鳩のアイコン付最中の皮などの、
老舗和菓子屋さんならではのアイディアが秀逸だった。(10)

今回のテーマは、石清水八幡宮のエンターテイメント性に方針決定です。

③概要を客観的にまるめる

Located on the border of Kyoto and Osaka, Iwashimizu Hahimangu is a large shrine complex on top of Mt. Otokoyama (Mt. Guy) dedicated to both Buddhist and Shinto practices. The shrine was built in honor of Hachiman, the God of War in 860, according to an oracle who informed the priests that the god atop of the mountain would protect the capital and the country.

石清水八幡宮は、大阪と京都の境に位置する、男山の山頂の巨大神社複合施設です。山頂の神が都と国を守るという御神託を受けたことから、八幡神という戦の神をまつる神社として、860年に建てられました。

テキストには必ずタイトルをつけますが、書くのは後回しにします。
テキストの究極の要約であるタイトルは、最後にしないと書けないからです。

全体の構成として、最初にアウトラインをしっかり描くことを心がけています。
ここをはしょると、続く一切の説明で迷子になり、長すぎると退屈して読む気が失せるのが、難しいところです。
極力客観的に、数字を使って

④テーマにかかわるエピソードで輪郭を描く

今回の石清水八幡宮では、前日の雨で、ハイキングルートが封鎖されていて、
男山ケーブルカーに乗ることになりました。
そこで、ハイキングルートを行かないと普通は寄れない、ふもとの高良神社にもお参りしました。
ここが素敵で、徒然草のエピソードをからめて、ぜひ紹介したいと思いました。

画像12

徒然草の原文はこれです。

徒然草第52段

仁和寺(にんなじ)にある法師、年寄るまで、石淸水を拝まざりければ、
心うく覚えて、ある時思ひ立ちて、
たゞひとり、徒歩(かち)よりまうでけり。
極樂寺・高良などを拝みて、かばかりと心得て帰りにけり。
さて、かたへの人にあひて、「年比(としごろ)思ひつること、果たし侍(はべ)りぬ。聞きしにも過ぎて、尊くこそおはしけれ。
そも、参りたる人ごとに山へ登りしは、何事かありけん、ゆかしかりしかど、神へ参るこそ本意なれと思ひて、山までは見ず」と言ひける。

すこしのことにも、先達はあらまほしき事なり。

(口語訳)
仁和寺にいた、ある法師が、
年をとるまで石清水八幡宮をお参りしたことがないことを情けなく思い、
ある時思い立ち、一人、徒歩でお参りにいった。
(山麓の)極楽寺と高良神社をお参りし、
(八幡宮へのお参りは)これだけだと思い込み帰路の途についた。
帰った後、傍輩に向って、「ずっと(心に)思っていたこと(八幡宮へのお参り)を果たせた。聞いていた以上に尊さ(八幡大神の御神威)を感じた。
ところで、他の参詣者が皆、山へ登っていったが、
何か山上にあるのだろうか。行ってみたいとは思ったが、
お参りすることが本義であるからと思い、
山上までは見に行かなかった。」と言った。

小さなことにも、案内者(指導者)は欲しいものである。

*石清水八幡宮のサイトから引いています。

史料(神社由来と徒然草)にあたった段階で、860年に創設、1350年前後で大賑わいって、
めちゃくちゃ昔から人気のある、一大アミューズメントパークだったんだなぁーとびっくり。

ここで、石清水八幡宮のエンターテイメント性+サステイナビリティという、
一歩突っ込んだテーマが浮かび上がってきました。そこに力点をおいてまるめたのが、次のブロックです。

We worshipped Koura shrine at the foot of the mountain anyway. A famous tale in the 14th century called ‘Essays in Idleness’ tells about crowds of this mountain in those days. One day a certain priest from Kyoto Ninnaji temple set off alone on foot on his pilgrimage to worship the famous Iwashimizu Hachimangu. Seeing crowds at this Koura shrine to suppose that was all about Iwashimizu, he returned to Kyoto without climbing up to the mountain.

まずは、ふもとの高良神社にお参りしました. 14世紀の「徒然草」には、往時の男山の賑わいが描かれています。ある日、京都仁和寺のお坊さんが、石清水八幡宮に一人でお参りに行きました。そして、ふもとの高良神社の混雑ぶりをみて、あぁこれがかの有名な石清水八幡宮か!と納得し、男山に登ることなく京都に帰ってきてしまいましたとさ。

⑤具体的なアイテムを並べて個性を描写し、テーマを肉付けする

ここからは、私自身のパーソナルでリアルな体験を、具体的なアイテムを並べて描きます。
このブロックの説明に対応するのは、次の9画像です。

画像4

It’s nice to hike up listening to the songs of wild birds, however on the visit, we chose to ride the Otokoyama Cable Car and enjoyed a panoramic view of both Kyoto and Osaka.

In the main hall many people took their infants to be ‘baptized.’ Traditionally the Japanese children worship their local shrines at the age of 3, 5 and 7. Given a fortune teller of pigeon, a mascot for this shrine and a special stamp for our religious passport, we found a nice bamboo toy store run by neighbors at the summit. The good-quality bamboo produced here is world-famous for its significant contribution to the world of science. Thomas Edison used bamboo from the shrine area to create filaments for his first light bulb.

We happily ended the tour with lunch at a 250-year-old restaurant /sweets maker. A simple bowl of noodle can be claimed as a lazy-mom’s Sunday lunch, yet the crispy savory Mochi rice cake made the dish special. A pigeon icon on a pink wafer was nice too.

野鳥の声を聞きながら、ハイキングするのも気持ちいいんですが、その日は男山ケーブルカーに乗って、京都と大阪が同時に知謀できるパノラマビューを楽しみました。

本殿では、お宮参りの赤ちゃん連れが多く見られました。日本では、3才、5才、7才に地元の神社に詣でる習慣もあります。神社のマスコットである鳩のおみくじを引いて、ちょっと特別な御朱印をいただき、山頂では素敵な竹のおもちゃ屋さんも見つけました。ここでとれる竹は、優れた品質で有名で、実は世界の科学に大きく貢献したことでも有名なのです。トーマスエジソンは、この周辺でとれた竹をフィラメントに使って、電球づくりを成功させました。

そして、創業250年の老舗うどん屋/和菓子店で、幸せにその日のツアーをしめました。日曜日のお母さんの手抜き料理とも言われかねない素朴なうどんは、焼きたての香ばしいお餅がのっかることで、特別な一品に仕上がっていました。最中の皮の鳩のアイコンも秀逸でした。

ここで書いたように、実は、石清水八幡宮はエジソンとつながりがあります。
(実際、山頂にエジソンの記念碑があります。)
このエピソードは面白い上に、世界中の人が大体知っているであろうエジソンという人物とリンクすることで、
一気に親近感が湧くはず、とねじこみました。

書けなかった部分まで踏み込んでみると、最初につくった電球のフィラメントは耐久性に乏しく、
実用化に向けて思いあぐねていたある日、
研究室に置いてあったどこかのおみやげの扇子の骨が竹だったのを見て、竹!と思ったエジソンが、
中国から日本から、いろいろな竹を収集して実験した結果、
男山産の高品質の竹で、100時間を超える記録を打ち立てたというもの。

ここは概念的な一般論がつづくと間延びするので、五感をフルに刺激して、
読み手になじみのある状況とリンクさせながら、ストーリーを伝えます。

また、具体的なアイテムを並べることで、石清水八幡宮の個性をふわっと浮かび上げるのと同時に、
サステイナビリティあるエンターテイメント性という全体のテーマにも一歩踏み込みます

⑥伏線を回収し、主観でしめる

「楽しかった」「面白かった」といった感想は、知ってる人だったら温かなまなざしが向けられるものの、
知らないだったら「あっそ」の一言で片付けられるのが、人間のさがではないでしょうか。

なので、これまでの話を一気に回収しながら、ほんのひとさじの私見をトッピングして、しめにかかります。

This kind of sustainable cultural is so entertaining and family friendly. Shinto shrines are strongly connected to our birth and have created necessity to worship regularly, that makes the places even more sustainable. If necessity is the mother of invention, she may be the wife of sustainability.

この手のサステイナビリティのある文化施設は、エンターテイメント性が高く、ファミリーフレンドリーです。神社は日本人の「生」に深く関与し、おりにふれた参拝の必然性をデザインすることで、一層、場がサステイナブルになるように設計されています。必要が発明の母だったとすれば、その母は、サステイナビリティの妻なのかも。

最後の最後に、私のオリジナルな見方を出します。
由来書のきれいなまとめだったら、こなれた英語で書かれている、
プロの写真付きのガイドブックがいい、って話になると思うので。

私の強みは、自分がデザインする側の人間だということで、どういう仕組みで、
どのようにつくられているのかという場所に対する観察眼が、他のガイドにはないだろう、「売り」です。
ですが、私のレクチャーではないので、売りすぎるとただの押し売りになります。
だから、まるめてまるめて。

ここでは、必然性のある行為を場所に埋め込むことで、
サステイナビリティが自ずから循環するそのシステムのデザインこそが、
こうしたご長寿文化宗教施設に共通する特徴だと思い、その考察を書きました。

そこで、エジソンが残した明言(元ネタはプラトン)「必要は発明の母」の必然性の擬人化に一歩踏み込んで、
一人の女としての彼女の像を妄想しながら、「必要はサステイナビリティの妻」としめました。

出オチにしないタイトルで、まるめにまるめる

やっとタイトルです。出オチにならないよう、「必要が発明の母だったとしたら」で止めました。

タイトルとトップ画像のギャップがありながらも、
テーマの真芯にあたるようなタイトルが理想的
だと思っています。

みんなのCultural Literacyをアップデートするのがガイド

改めて自分がガイドで心がけていることを書き出してみると、9割が、事象の定量化、定性化でした。
プロ組織に属してガイドしていたとき、9割主観の超エンターテイメントで攻める同僚がいましたが、
私は真逆のスタイルです。(いろいろあっていいと思っています。)

字数や枚数など制限のあるメディアで書いてガイドすることは、考えながら価値を伝えること。

私のガイド。まずは自分自身のCultural Literacyをアップデートする。

現場を感じて、史料にあたる。

そして、結論に目当てをつけながら、史料の切り取り方、並べ方で軸を見せながら伏線を張り、
仮説を検証しながら、結に収束させる。

学術論文でも常套手段の方法ですが、人を説得する上で有効だと思います。

又、書くこともデザインの一つだと思います。デザインの良しあしとは、
デザインを受け取る側への思いの深さと相関するのではないでしょうか。

文章や写真のセレクションや並びにこそ編集力が必要であり、
そのデザインセンスを、私は自分のオリジナリティとしたいところがあります。

結果、学術論文執筆や、大学の授業、建築の設計にも共通する手法でした。

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